こんにちは。Zianser編集部です。
「単価交渉」という言葉には、SES営業として独特の緊張感があります。断られる恐怖、関係が壊れるかもしれないという不安。今回は、初めて単価交渉に挑んだ日の完全な失敗と、2度目で初めて成功した時の話をします。
最初の交渉は完全な準備不足だった
SES営業1年目の秋、上司から「Aさんの単価を上げてみろ」と言われました。
Aさんは40代のベテランJavaエンジニアで、当時の単価は月80万円。スキルと経験からすれば85〜90万円は十分狙えるレンジでした。
「わかりました、やってみます!」と元気よく返事をしたものの、当時の私には「交渉」の準備が何もありませんでした。
しかし私は、交渉の準備をほとんどしないままエンドクライアントの営業担当に連絡してしまいました。
「Aさんの単価なんですが、少し上げていただくことはできますか?」
返ってきた答えは一言。「難しいですね」。
以上、終わり。3秒で玉砕しました。
失敗の原因は「なぜ上げるべきか」を言えなかったこと
上司に報告すると、こう言われました。
「なんで上げるべきか、具体的な根拠を言えたか?」
答えられませんでした。私は「上げてほしい」という要望を伝えただけで、相手が「なるほど」と思えるような理由を何も準備していなかったのです。
この失敗から学んだことは、単価交渉は「お願い」ではなく「提案」だということです。相手が「合理的だ」と思える根拠がなければ、交渉はスタートラインにすら立てません。
失敗から学んだ「根拠3点セット」
上司から教えてもらったのは、単価交渉に必要な「根拠3点セット」でした。
1. 市場単価の調査データ
「現在の市場相場と比べて、Aさんの単価は低い」という客観的な事実を用意する。
具体的な相場の調べ方:
- 複数の求人サイト・エージェントで同等スキルの案件単価を確認する
- 業界コミュニティや信頼できるBPからの情報を集める
- Zianserのような案件データが蓄積されているプラットフォームを活用する
2. 稼働実績のまとめ
「Aさんはこれだけの貢献をしている」という具体的な実績を示す。
記録すべき実績の例:
- 稼働期間・遅刻・欠勤の記録(皆勤は強力な武器)
- 追加で行ったスコープ外の貢献(提案・改善・後輩への教育など)
- スキルアップした内容(この期間に取得した資格、習得した技術)
- クライアントからのポジティブなフィードバック
3. 相手のメリットの言語化
「単価を上げることで、相手(クライアント)にも良いことがある」という視点で話す。
相手メリットの例:
- 「Aさんのモチベーションが保たれ、長期継続稼働が期待できる」
- 「今の単価では他社に引き抜かれるリスクがある。離脱すると採用・引き継ぎコストがかかる」
- 「単価アップにより、Aさんがさらに高度な業務にコミットしてくれる」
2度目の準備:根拠を整えること
半年後、再挑戦の機会が来ました。今度は別のエンジニア・Bさん(30代、AWSエンジニア)の単価アップです。
今回は準備に2週間かけました。
用意した材料
① 市場単価の調査
AWSエンジニアの現在の市場相場を調べ、Bさんと同等のスキルセット(AWS SAA・EC2/RDS/S3の実務経験3年)で85〜95万円が相場であることを確認。当時のBさんの単価は80万円で、明らかに低めでした。
② 稼働実績のまとめ
Bさんが参画してから1年間の実績をまとめました。
- 無遅刻・無欠勤(12ヶ月)
- AWS Lambdaを使った自動化の提案・実装(コスト削減効果あり)
- 後輩エンジニアへのOJT対応
- チームの夜間障害対応に何度か自主的に参加
③ 相手のメリットを言語化する
「単価を上げることでBさんのモチベーションが保たれ、長期継続稼働が期待できる。仮に離脱した場合、同等スキルの人材を採用するためのコストと引き継ぎ期間を考えると、3〜5万円の単価アップは合理的な投資である」という文章を事前に準備しました。
交渉当日──「相場より低い」という事実が効いた
エンドクライアントの担当者との打ち合わせで、私はこう切り出しました。
「Bさんが参画してから1年、非常に安定した稼働をいただいています。一方で、現在の市場相場を調べたところ、同等スキルで85〜95万円のレンジが標準になっています。現状の80万円はBさんへの評価として少し低い水準かと思い、今回ご相談させていただきました」
担当者は少し間を置いて、こう言いました。
「確かに、Bさんには助かっています。少し社内で確認してみます」
1週間後、「83万円でお願いしたい」という回答が来ました。
完璧な勝利ではありませんでしたが、初めて「交渉が成立した」という体験でした。
交渉から学んだ「断られる恐怖」の正体
この経験を通じて、私は「断られる恐怖」の正体に気づきました。
恐怖の原因は「準備不足」だったのです。
準備がないから、断られた時に「他に言えることがない」という追い詰められた感覚になる。しかし根拠が3点揃っていれば、断られても「ではこういうデータもあります」「こういう実績もあります」と続ける余裕が生まれます。
交渉は怖いものですが、準備さえ整えれば、思っているより拒絶されることは少ないと気づいた経験でした。
まとめ:単価交渉の成功率を上げる3つの準備
- 市場相場の調査 — 同等スキルの現在の相場を数字で把握する
- 実績の可視化 — 稼働期間・追加貢献・スキルアップを具体的にまとめる
- 相手のメリットの言語化 — 「なぜ上げるべきか」を相手目線で説明できるようにする
この3点を準備してから交渉の場に臨むことで、成功確率は大幅に上がります。
最初の交渉で完全に玉砕した私でも、準備を整えることで次の交渉では成功できました。「断られる恐怖」は、準備という武器で確実に軽くなります。